甲斐の送り込んだ忍者は 女だった。 女は一人になった菊に 音も立てずに 近づき 口を塞いだ。 「声を上げないで! 聞いてください。 私は あなたを助けに来ました。 お心までも お助けしたいのです。 私と一緒に お逃げ下さい。」 その言葉に 菊の瞳は 大きく見開かれ 大粒の涙が溢れた。 『心までも・・・ 助けたいと・・・ 私が 本心でなく景虎に身を委ねている事を 知っていてくれている。 あの人は・・・・ やはり 私を助けに来てくれたのか』 菊は信長を 心から想った。