お守り袋を縫い終え

中に 
信長が
以前くれた 
ホタルブクロの花の押し花を
布に包んで
お守り袋の中に入れ

他に何を入れようかと
考えているところに


馬の蹄の音がした。



「信長さまの家臣、
平手政秀と申します。

菊殿は 
おられるか?」


菊は 
慌てて 
戸を開けた。


「私です」


「ほう。そなたが


なるほど、信長様が 
あれほど御執心だった訳も

わからぬ訳では
無いのう。


しかし!


この平手

信長さまの
勝手なふるまいを

これ以上
黙って見過ごす訳には
いきますまい!


すまぬが 
そなたには

身分の程を 
わきまえて頂き

信長さまと 
濃姫様との婚儀が

滞りなく 
終了するまで

ひっそり 
お暮らしいただきたい」



「え?
婚儀?」


菊は 
耳を疑った。