「そんな事、思ってる訳がないだろ」
俺が否定しても千歳は話を聞いていない。
「…私があれこれとやかく言うからきっとうるさくなったんだわ。
だって…仕方ないじゃない。
私が言わないと勇気はいつまでも、何も決めないんだもの」
「千歳。聞いてる?」
「こんなにイライラする恋は本当に初めてだわ。
もどかしくて、焦れったくて」
………。
聞いてないな。
俺は彼女の手をそっと離すと側の椅子に腰かけた。
「……。勇気?」
彼女の呼びかけに返事をせずに、その隣にある灰皿の煙化吸引装置のスイッチをピッと押す。
そしてポケットから煙草を取り出すとそれにシュッと火を点けた。

