――「藤崎。このクリームの製造工場リスト、コスト表もつけてほしいんだけど」
翌日。
私は藤崎のデスクに書類を置いて一言言うと「じゃあ」とその場を離れようとした。
「沢森さん」
呼ばれて振り返る。
私を見上げる藤崎の視線にドキリとする。
「…ありがとう。
また伊東課長に怒鳴られるところでした。
…リストをつけて沢森さんのところに持って行けばいいですね?」
彼がニコッと笑う。
「…うん。そうして」
「はい」
私は逃げるようにその場を立ち去る。
………ヤバイ。
何なの?…このドキドキは。
そのまま化粧室へと駆け込んだ。
――「だっけどさあ、びっくりよね〜、藤崎くん」
……え。
中から聞こえた会話に足がピタリと止まる。
思わず入り口の壁の裏に隠れた。
「何かいい男になっちゃって〜。
あんな美形だっただなんて、詐欺よね」
この声。………桐山?

