「あら、それは誰かしら。
…バカにしてんの?」
宮岡は肩をすくめて笑いながら言う。
「相変わらず強気だね。
じゃあ、どこのどなたが君を泣かせているの」
「誰にも泣かされたりなんかしていないわ。
目にゴミが入ったのよ」
私は袖口で涙をクッと拭うと、再び書類に目を向け彼を無視した。
「千歳ちゃん、俺の『沢森 千歳攻略作戦』、聞きたいでしょ?」
「……仕事したら?」
「冷たいね。
今の君にこそ俺が必要なのに。
俺、尽くすよ?寂しく思う暇なんて無いほどに」
「……いらないわ。寂しくないし」
私は宮岡に視線も遣らずに受け流した。
「あらららら。
今がチャンスだと思ったのにな。
姫はご機嫌斜めだったね。
分かった。
出直すよ。いつでも呼んでね」
「………」
……寂しくても、…呼ばないわよ。

