…………え?
「何?…藤崎?」
彼はゆっくりと顔を上げて私を艶やかに見つめた。
そこには微かな笑みがある。
………?
「藤崎」
哀しげな光を帯びた優しい微笑みを湛えたまま、彼はゆっくりと私の唇に指をそっと触れた。
「……沢森さん。
ありがとうございました。
俺なんかに付き合ってもらって。
……嬉しかった。
とても、幸せでした」
「は……?ちょ、…何」
「俺は、忘れません。
本当にありがとう」
そう言うと彼は私から視線を逸らし、背中を向けるとゆっくりと歩き出した。
「藤崎」
呼んでも振り返らない。
…………。
ちょっと待って。
どういう事なの。

