大体おかしいわよ。
今まで散々無視していたはずの桐山が何でいきなり出て来るのよ。
……眼鏡を外した途端に。
あの女。
まさか思ったよりもイケメンだからって、今度は藤崎に狙いを定めた訳じゃないわよね…?
そいつはわたしのものよ。
指一本、触れたりしたら承知しないわよ。
――「課長、これからマーガレットを焼いて下さるそうです!
午前中には持ってこれるみたいです」
受話器を置きながら藤崎が課長に言う。
「よし。分かった。
じゃあ調理部にそう伝えろ」
「はい」
彼は課長にそう言われた直後に再び桐山の前にしゃがみ込む。
「すみません。ありがとうございます。
後は自分で」
「いいですよ。手伝います。
………良かったですね」
「はい。ありがとうございます」

