「あ、もうこんな時間…


先生たち帰っちゃうから
早く出るよ。」




時計の針は6時30分を指していた。



しっかりとした口調で言ったけど
内心はさっきのことで
心はふわふわしていた。




「なんだ…ドキドキしてたの
私だけじゃなかったんだ…」




そう小さくつぶやいた。
なんだかうれしかった。




「ん?なんか言った?」



鍵をかける山下君がこっちを見る。




「ううん、なんでもないよ。


さ、帰ろっか。」






初夏にさしかかり
6時でもまだ外は明るかった。


こんな軽い気持ちになったのは
いつぶりだろう。




この時だけは山下君に感謝しても
いいかなって思えた。




「先輩、行くよ?」



「うん」


今日だけはお互い素直になれた。