地面に描かれた魔法陣


そこから溢れ出す光はどこか暖かった


怪鳥から吹く火球は先ほどよりも大きいものだが、不思議と怖くない


火球は光に触れた瞬間、弾けた


怪鳥は〔声〕の方へ振り向く


「途中から姿は見えていたが変異体とはいえ、さすがにデカいな…」


マリアは馬車の窓から身を乗り出し、現れた青年に向け叫んだ


「逃げて、逃げて下さい!!」


自分のせいでこれ以上ヒトが死ぬのは耐えられなかった


現れたのはたった1人


殺されるだけだと…


「サンダー」


青年は右腕を掲げ、振り下ろす


瞬間、空から雷撃が怪鳥に落ちた


〔ギッ!?〕


怪鳥は短く鳴き、何が起きたか分からないまま倒れる


雷撃により怪鳥の体は動かない


「ただデカいだけの変異体か…」


静かな足取りでゆっくり近づいていく青年


「ま、まさか詠唱破棄!?」


「それだけではない、〔サンダー〕は風系の下級魔法だぞ!?」


魔法を最も効率的に発動させる鍵〔詠唱〕
詠唱なしで魔法を発動出来る者は少なく、発動させても何10分の1まで効力は下がる


2人の魔導師は青年の底知れぬ力に驚愕した


剣を掲げ、動けない怪鳥の首へと一閃した


〔……ッ!?〕


声にならない悲鳴
怪鳥の全身が灰色に染まり崩れた





「大丈夫か?」


見たところ魔導師達は無事だ


青年は馬車の中の少女の安否を確認する


侍女は気を失っていたが、精神的なものだろうと判断した


先ほど叫んだ少女も怪我はないようだ


おずおずと少女は青年に話し掛けた


「…助けて頂いて本当にありがとうございます。あ、あの…あなたは…?」


まだ気が張っているのだろうと思い、青年は緊張をほぐす為、意地悪な顔を作り


「名を尋ねる時は自分から…じゃないか?」


台詞だけなら相手が不快に思っているととれるが、口調は優しかった


顔を赤らめ〔あっ、そうですね〕と口にし、少女は姿勢を正した


「私はマリア、マリア・キャルロット」


「俺はライ、ライ・ハースト」


これが2人の始まり


物語はここから…