【短篇】君ともっと。

雑誌やテレビとかで見た恋愛談。


友達から聞いた体験談。

そんなもので、俺は恋愛を真似していた。


【キスしたのは、付き合って一ヶ月】


【Hしたのは、付き合って半年】


そんな言葉が、並べられていて妙に焦ってしまっていた。


俺は、咲と恋愛をしていたハズなのに。


回りの恋愛を、まるでルールのように見てしまって咲を傷つけた。


咲の気持ちも待たずに…。


俺、最低だな…。


「…………っふ…。」


「咲」


俺は、制服を直そうと咲に手を伸ばした。


「…やっ。…嫌や…。」

咲は、俺が今まで見たどの顔よりも酷く恐怖で歪んでいた。


俺は、手を引っ込める。

「も…怖い…やめっ…」

「咲、…俺、何も…しない…から…。」


そんな薄っぺらい言葉では、今の咲が俺を信じるには不十分な気がする。

だけど、言うしかなかった。


言うことでしか、伝えられないから。