【短篇】君ともっと。

「お…お邪魔しま~す。」


「ええよ。誰もいいひんしぃ。先、部屋行っといて。」


咲はキッチンへと消え、俺は咲の部屋へ向かった。


「久しぶりに来たなあ…」


ベッドに座って、俺は部屋を見回す。


「おまたせぇ。お茶やでぇ。」


「サンキュー。」


咲きはコップを机においた。


コップを置く音が今日は、やたらと耳に響いた。

咲は、俺の隣に座った。

「久しぶりに来たやろぉ??」


「うん。けど、あまり変わってない。」


「当たり前やろ。」


咲は、俺の肩をたたいた。


「あっ…。」


俺の目に映るあのマグカップ…。


俺はマグカップに手を伸ばす。


「これ…、俺とおふくろのと一緒…。」


咲を見ると、顔を真っ赤にして俺のマグカップをもぎ取った。


「っええやろっ。ウチかて十馬と…お揃いがええねん。まだ…使ってへんけど…。」


咲はマグカップを隠すように抱きしめた。