花屋かと思っていたそこには、
一輪の花もなかった。
その代わりに大小様々な棚が並べられ、
壁には沢山のメッセージカードを入れた
額縁が乱雑にかけられている。
「花屋なのに花がないじゃんか」
思わずそう呟きながら、
フラフラと店へと足を踏み入れる。
地震が来たら一発で倒れそうな棚には、
無数の引き出しが付けられていて、
その一つ一つに古い紙が貼られている。
「花屋って言うより
漢方扱ってる店みたいだな」
「うん。よく言われる」
紙になんて書かれているのか気になって、
何とか読もうと奮闘する俺の後ろから、
突然声をかけられた。
ビックリして振り返ると、
入り口のちょうど対面に置かれた机に
いつの間にか人が座っていた。

