「ハァ・・・・」 ―カリカリカリカリ クッションに顔を埋める私の耳に、 何かを引っ掻くような音が届いた。 顔を上げると、 一匹の黒猫が窓枠を引っ掻いている。 「ああ、引っ掻かないで」 そう言いながら窓を開けると、 黒猫はニャァと一声鳴き、 ヒラリと下に飛び降りた。 思わず目で追うと、 玄関の前に誰か立っているのが見えた。