センチメンタルブルー

「色は何色を基調にしますか?やっぱり今の季節ならヒマワリを入れると元気なイメージでいいですね」

「あの、俺。花とかほんとによくわからなくって。
値段もよくわからなくって……。けども、一般的にもらって恥ずかしくないような、ごくごく普通の飾りつけにしてほしいんです」

「あー、はい。はい。そういうことだったんですね。」

どうやら、花に関する値段の相場を含む、なにもかもがよくわからないがゆえの「三万円」という値段設定だったらしい。

「やっぱり三万円くらい出さなきゃ、見映えのいいでっけー花束は作れないですよね?」

「そんなことはないですよ。確かに三万円だとそりゃ見映えいいものはできます。
でもそれって花の種類によって値段も変わってくるんです」

「花の種類?」

「そうです。たとえば、蘭の花。あれが高価なんです。品質によっては一本千円以上、なんてことも。 それを束にするということは、蘭を何本も使いますよね?その蘭を引き立てる小花たちも添えるとまた値段が上がります。
もちろん気持ちが大事ですけど、五千円でも立派な花束ができますよ」

私が説明してると、彼はみるみるほっとした顔をした。

「なんだー、そうだったのか!丁寧な説明ありがとうございます、いやほんと、ありがとうございます」

「いえいえ、改めて、いかがなさいますか?花束よりも、アレンジメントの方がかわいらしいかもしれませんね」

「じゃあ、五千円くらいで、よくわかんないけど…アレンジメント?で!
で、おねえさんの言う通りヒマワリとかを使って…いやいや、おねえさんのセンスにお任せします」

「かしこまりました!」

にこりと笑った彼は、なんだか少しキレイだった。
幼すぎる少年のような、話しかけ辛い青年のような、どっちつかずの覚束ない笑顔は、私に少しドキドキという感情を与えてくれる。