センチメンタルブルー

バジルや、しその苗たちもかわいく並べてあげて、シャワーホースで花たちに水をキラキラとかける。
この瞬間が出勤して一番好きな時間だ。

「さとみちゃんおはよう!今日もあっついね」
「おはようございます。シャワー、かけてあげましょうか?」
隣の金物屋のおじさんといつも通りの挨拶を交わしていると、一人の男性が声をかけてきた。

「すいません、誕生日にプレゼントする花を見たいんですが」

「 はい、いらっしゃいませ!贈られる方とご予算お聞きしてもよろしいですか?」

「あ、母にです。できれば、三万円くらいで……」

驚いた。それはそれは驚いた。

フラワーアレンジメントで、大体三千円からお願いする人は多いけど、三万円なんてったら、ほら、コンサートとかで芸能人が送った花が会場に並べられてるじゃない?
あんな大層なものができあがるほどの額だ。

「三万円…ですか?かしこまりました…花束にしますか?アレンジにしますか?
あ、とりあえず店内でお花見た方がいいですよね!ささ、暑いのでどうぞどうぞ」

とりあえず私はその男性を店内に入れた。