センチメンタルブルー

本当に暑い、ジワリジワリと暑い7月だった。
打ち水をしている茶沢通り沿いの店の数々。
打った水も干からびてしまうほどの暑さ。

いつものように花屋に到着し、エプロンを纏う。
ポケットにはハサミ、配達のメモ帳、携帯電話(俗にいうスマートフォン)が入っている。

「おはよーございますー好美さん」

店内は花に適した気温になっているため、出勤した時にどろっとかいた汗がヒンヤリするくらいに気持ちがいい温度。
もっと強い冷たさを求めて、花をしまっているガラス張りの冷蔵庫を開けて入る。

「あぁー気持ちいい。ね、デルフィニウムちゃん」

「とみちゃん!涼んでないで早く外にお花並べてー」

好美さんや哲夫さんは私のことを「とみちゃん」と呼ぶ。
なぜだかは、もちろんわからない。が、そこそこ気に入っている。

「はーい」

すぐに冷蔵庫から飛び出し、店のシャッターを開けてから、花を並べるための棚を並べる。

華やかな職業ほど、力仕事は多いものだ。
本当に植木ばちや観葉植物は重い。