離任式が終わった今、あたしは全力で数学準備室に向かった。 先生に、郁斗先生に、会うために。 「郁斗先生っ!!」 バンッと大きな音を立ててドアが開く。 「み、ずき…」 「どうしてっ、どうして言ってくれなかったの?」 「それは…」 「言い訳とか聞きたくない!!」 もう、先生の気持ちとか考えられなかった。 「ごめん…。」 謝る声がして、なにかに優しく包まれた。 暖かくて、落ち着くいい匂い。 それが先生だとわかってハッとした。