管理会社の社長と知り合いだった専務は、軽々と解約をしてしまった。
その上、社長にあたしの事を話したのは、
“初めに言っておけば、遠慮せず一緒に帰れるだろ?”
だかららしい。
その根回しの良さに、本当呆れる。
「美月さん、美月さん!」
「あ、はい!すいません…」
いけない、ボーッとしていた。
和久社長に声をかけられ、我に返ったあたし。
隣の専務が睨んでいるのが、横目で分かった。
「やっぱり、緊張してるんだ?どうですか?少し、庭にでも出てみませんか?」
「えっ!?庭!?」
突然の誘いに、思わず普段の軽い口調が出てしまった。
すると、和久社長は笑いながら言ったのだった。
「ここ、夜風が気持ちいいんです。大丈夫ですよ。変な事はしませんから」
「いえ、そんなつもりでは…」
なんて、そんなつもりだったけど。
どうしよう~。
行かなきゃいけない?
イヤなんだけどなぁ。
チラッと専務に目を向けると、
「それがいい。行ってきなさい」
社長がご機嫌な口調で言ってきたのだった。

