「ああ、和久。お前も元気そうで良かったよ」
あの人が弟なんだ!
素っ気ない専務とは違い、社長の向かいに座っているその人は、満面の笑顔であたしたちを見た。
和室のこの部屋は、真ん中にテーブルが置いてあり、それを挟む様に上座には社長と絢が座っていた。
部屋からは一つだけ窓があり、日本庭園の庭に出られる様になっている。
夜でも明かりがともされ、松の木や池があるのが見えた。
それにしても絢ってば、さすが場慣れした感じね。
社長の隣に座る姿には威厳がある。
そして、社長の真ん中には専務の弟。
そしてその隣には子会社側の重役だろうか、二人の50代くらいの男性が座っていた。
二人とも痩せていて腰が低そうな雰囲気の通り、あたしたちが入ってくるなり、素早く立ち上がると挨拶にやって来たのだった。
「まあまあ、今夜はあまり堅苦しくならず」
こちらの社長の言葉に、二人はまたもや頭を下げると自席へ戻る。
「そうだよ。今夜は、久しぶりに兄貴に会いたくて、こういう場を作っただけなんだからさ」
そんな和久社長の言葉を聞き流す様に、専務は社長の隣へ座った。
そしてあたしは、誘導されるがまま、専務の隣へと座ったのだった。
座った瞬間、和久社長と目が合い、軽く微笑まれる。
さすが兄弟。
この和久社長もかなりのイケメンで…、
専務と同じ臭いがする!

