「え…?」
言葉を失う専務を見て、すぐに心底後悔した。
これって、まるで“彼女”にしてくださいって、言っているようなものじゃない。
「あ、あの…。誤解しないでください!恋人になりたいとか、そんな事を言ってるんじゃなくて…」
体だけの関係を、続けたくないって事なんだけど…。
「あ、ああ…。分かってるよ」
ほら~!
珍しく専務が動揺してるじゃない。
「だから、えっと…。つまり、体だけの関係なんてイヤなんです」
ダメだ~。
言えば言うほど、ドツボにはまる。
完全にパニックなあたしに、専務が尋ねてきた。
「言いたい事は分かったよ。要するに、遊び感覚でヤリたくないって事だろ?」
「そうです!そうなんです。だから、ご自宅にあたしを置いてくださるのは嬉しいんですが…」
「オレは、いい加減な気持ちで美月を抱いてないよ」
「え?」
言葉を遮る様に、専務はキッパリと言った。
「オレは、遊びのつもりじゃない」
ニヤッと笑うと、あたしのおでこに軽くキスをする。
「あ、章人専務。それ、どういう意味ですか?」
ア然とするあたしの質問には答えず、専務はデスクへ戻ると書類に目を通し始めた。
「専務?あの…」
立ち尽くしたままのあたしにチラッと目を向け、
「美月、戻っていいよ。お前とキスしたかっただけだから」
平然と言うと、また書類に目を戻したのだった。

