「血筋なんですね…」
「何か言ったか?」
「いえ、何でもありません」
呟く様な独り言さえも聞き漏らさず、専務は振り返った。
“あたしに会いに来た”ねぇ。
なんだか、社長の言動って専務に似ている気がする。
やっぱり親子だわ。
「それより“章人専務”。何かご用ですか?」
「え?」
部屋に連れ込んで、今度は何をする気かしら。
睨む様に見るあたしとは反対に、専務は笑顔を浮かべた。
「美月、今なんて言った?」
「だから、何かご用ですか?って…」
「そうじゃないよ。その前」
あ、やっぱり気付いた?
「章人専務…」
本当は、かなり恥ずかしいけれど、あたしも名前で呼ぶ事にした。
なんとなく、そうするべきかなって思ったから…。
すると、笑顔のまま専務は、あたしを抱き寄せてきた。
「せ、専務!?ここでは、やめてください!」
見境なさすぎでしょ!?
「“専務”じゃないだろ?ほら、もう一回、さっきみたいに呼べよ。じゃないとキスするぞ?」
もう~!
とんでもない脅しだわ。
「章人専務!やめてください!」
「よく出来ました」
そう言うと専務は、あたしの顔を上げさせてキスをした。
「や、約束破り…」
かろうじて憎まれ口を叩いても、すぐに唇は塞がれる。
「ほら、美月。もっと口を開けろよ」
「え…?」
誰かが、突然入って来たらどうするのよ…。
そう思っても、あたしも止められなかった。
章人専務とのキスが、甘すぎて…。
自然とあたしは、専務の首に手を回していたのだった。

