愛情のないキスなんて、本当はしたくない。
だけど、そんな事を言うとまたガキくさいとか言われそうで、言葉に出来なかった。
それに、あたし自身、ドライな人間関係には慣れている。
何とも思わない振りをするのは得意だ。
だけど、どこかで心から、あたしを想ってくれる人が欲しいと願っているから…。
だから、やっぱりこんなキスは切ない。
「美月、今からメシでも食いに行こうぜ」
唇を離し、専務はあたしを抱きしめたまま言った。
「行きません」
ここでついて行ったら、本当に今度こそ最後まで襲われそう。
キスの夢から覚めたあたしは、一気に現実へと戻った。
「何だよ、つまんねえな。いいじゃん。行こうぜ」
それでも抱きしめてくる専務の体を、今度こそ突き放す。
「遠慮させて頂きます。さっきのあたしは、どうかしてました。それでは、失礼します」
わざとらしく頭を下げると、専務の小さく“チェッ”と言う声が聞こえた。
だけど無視よ、無視。
身を翻して部屋を出ようとした時、
「待て、美月。お前の連絡先を教えて?」
専務が呼び止めたのだった。

