これは…、何?
かすかに匂う甘い香水の香りとタバコの香り。
そして遠慮なしに、専務はあたしの奥深くへと入っていく。
いや…。
やだ…。
「や、やめてください!」
やっとで顔をそむけても、専務は無理矢理、あたしの顔を自分の方へ向ける。
そしてまた、キスをしたのだった。
どうして、あたしなのよ…。
専務くらいなら、いくらでもキレイな人が寄ってくるでしょ?
こんな、ただの地味OLなんて相手にしないでよ。
自然と流れる涙を堪えたくて、あたしは目を閉じる。
だけど、溢れて止まらない涙は、頬を伝わって流れた。
やっぱり、秘書なんて断れば良かったんだ。
分かっていたのに…。
専務はこんな人だと分かっていたのに…。
やっと唇を離してもらえた時には、すっかり涙も止まっていて、代わりに息は絶え絶えだった。
「これで満足ですか?あたし、もう帰りますので」

