「ちょっと!何をするんですか!?」
まったく、油断も隙もない。
思わず手を払いのけると、専務は少し驚いた顔をした。
「靴は、本当にありがとうございました!だけど、それでこんな…、何かをされるならお返しします!」
キッパリと言いのけて、靴を脱ごうとした。
とその時、専務はあたしの腕を掴んで、無理矢理自分の方へ引っ張ったのだった。
「な、何をするんですか?」
背中に手を回され、あたしは専務の胸に埋まってしまう。
それでもなんとか、顔は上げた。
「初めてでさ。そういう反応」
「は…?」
もうあたしには、目の前にいる人が上司ではなく、ただのセクハラ男にしか見えない。
ありったけの軽蔑の目を向けたのに、専務は表情一つ変えない。
それどころか、そんなあたしの反応すら楽しんでいる様だった。
「悪いな。拒否られるほど燃えるタイプでさ」
「何を言っているんですか…?」
あたしは、あなたの遊ぶ女の一人にはなりたくない。
そんな人間じゃないもの。
だけど、そんな心の訴えが伝わるはずもなく、次の瞬間、専務の唇があたしの唇に重なった。

