だいたい、なんで専務を呼びに行く必要があるのよ。
鏡の中の自分が口を尖らせている事に気付き、慌てて表情を直す。
とても不思議な感覚だけど、こんな風に見た目が変わると、気持ちも違ってくる。
改めて、自分を見ていると―。
「おっ、美月!?お前、可愛くなったじゃん」
部屋に入ってきた専務が、あたしを見るなり声を上げた。
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしさで、なんとなく視線を合わせられないまま、あたしは立ち上がった。
「へえ。やっぱり変わるな。そっちの方が、美月らしい気がする」
「えっ?」
さっき、志帆さんもそんな事を言っていたけど…。
というか、
「志帆さんは!?」
「ああ、なんか来客があって接客中」
接客~!?
ちょっと止めてよ!
専務と二人きりにするなんて!
「専務、あたしたちもお店に戻りましょうよ」
二人きりなんて、仕事の間だけで十分よ。
「いいじゃんか。もう少し見せて?」
あたしに近付くと、専務は見下ろした。
「美月って小さいんだな?さっきはヒールで気が付かなかったけど、身長いくつだ?」
「…155センチです」
すると、専務は少し笑ってあたしの両頬に触れたのだった。

