可愛い…。
なんというか、柔らかい雰囲気になっている。
「美月さんの本来をイメージしました。色で言うなら、淡いパステル系」
「本来のあたし…?」
呆然としながら、鏡に映る自分を見つめる。
チークと口紅は、淡いオレンジ系ピンクが使われていて、アイシャドーは茶系を使ったグラデーション。
その色たちと、緩やかに巻かれた髪、そしてふんわり盛られた前髪とが、あたしを一気に“可愛い”女へと変身させていたのだった。
「じゃあ、この靴を履いてください」
足元に差し出されたのは、さっき見ていたベージュのパンプスだ。
「いいんですか!?」
すると、志帆さんは一枚のカードをちらつかせ、悪戯っ子の様な笑顔を向けた。
それは金色の、まさしくゴールドカードだった。
「章人さんから預かっていますので」
ええ~!
カードを渡すとか、しかもそれがゴールドカードとか、やっぱりあたしには理解出来ない。
「じゃあ、章人さんをお呼びするのでお待ちくださいね」
「えっ?志帆さん!?」
小走りで店内に戻った志帆さんを、呼び止める事は出来なかった。
「別に、呼びに行ってくれなくていいんだけど…」

