常連さんへのサービスで、志帆さんはたまにヘアメイクをしてあげるらしい。
「そのまま新しい服を着て、パーティーに行かれる方も多いので」
と、当たり前の様に言わたけど…。
「そうなんですか…」
適当な返事しか出来ない。
だって、あたしの生活とは無縁過ぎる話に、まったく共感できないから。
広さで言えば6畳ほどの部屋で、鏡に写る自分が、どんどん変わっていくのが分かる。
ポニーテールの髪はほどかれ、大きく巻かれていった。
「前髪は、こんな風に緩めに上部で止めましょう」
そう言って志帆さんは、黒ピンでふんわりと盛り上がる様に止めてくれたのだった。
「美月さんて、色白でキレイな肌だし、顔のパーツも可愛いんですよね」
「あたしが可愛い!?」
メイクを施されながら、思わず叫ぶ。
「何で驚くんです?とっても女の子らしい、可愛い顔なのに」
だって、あたしは可愛いだなんて、親にすら言われた事がないんだもん。
それを、こんな初対面のしかも美人に言われると信じられないって。
「はい!出来上がりです」
あたしの肩を軽く叩き、志帆さんは鏡越しに満足げな表情を見せた。
「これが…、あたし?」
きっと、普段から華やかな人には当たり前な施しかもしれないけれど、あたしにはまるで違う自分に見えたのだった。

