靴を買いに行く!?
「昼間にも言いましたけど、自分で買いに行きますから」
迷惑をかけた事とこれは別。
キッパリと断らなきゃ。
そう思っているのに、
「いいじゃないか。買いに行こうぜ。備品を支給してもらったと思えばいいんだよ」
と、強要するんだから困るわ。
すっかり戸惑っていると、専務は急かす様に言ったのだった。
「早くしろよ。店が閉まるぞ?」
「ええ!?本当に行くんですか?」
「当たり前だろ?」
ドアを開け、部屋を出て行く専務に慌てて追いつきながら、あたしはそう言った。
すっかりペースを乱されている。
専務は会社の立体駐車場まで行くと、車を慣れた手つきで出庫した。
本社勤務は初めてのはずなのに、こういうスマートな行動には感心する。
「ほら、乗れ」
助手席のドアを開けると、あたしを促した。
ちょっと、この車左ハンドルじゃない。
しかも、有名な高級車だ。
「この車、専務の車なんですか?」
「そうだよ。帰国した時に、一緒に持って帰ったんだ」
「そうですか…」
さすが…。
あたしとは、完全に住む世界が違う。
乗り込んだ車の中は、ほのかな柑橘系の香りがした。
見た感じでは、芳香剤はなさそうだけど、さりげなく見えない場所に置いてるんだろうな。
安物の匂いとは違い、どこか上品な香りが漂っていた。

