俺様専務とあたしの関係



椅子に座ったままのあたしは、涙を堪え両親を見つめた。


「お父さん、お母さんありがとう」


そう言うと、お父さんがすぐに言葉を遮った。


「やめなさい。お礼を言うのはこっちだ。美月、ここまで育ってくれてありがとう」


「そうよ、美月…」


お母さんは涙を流し、あたしのベールに手をかける。


バージンロードを歩く前に、ベールを顔へ掛けておくのだけど、これは母親が掛けてくれるのが習慣らしかった。


それを事前にお母さんと二人で聞いたあたしは、少しは親孝行が出来たのかなと思ったのだった。


「美月、幸せになるのよ」


お母さんがベールを掛け終えた時、あたしはこぼれそうになる涙を堪え、ただ小さく頷いた。


「そろそろ、お時間です」


式場の担当者に声をかけられ、あたしはゆっくり立ち上がると、お父さんの腕に手を回す。


「美月と腕を組んで歩くのは、最初で最後だな」


「お父さん…」


お父さんの寂しそうで、でも嬉しそうな笑顔に、また胸が詰まる思いだった。


「ゆっくり歩こう。お前は、もう一人の体じゃないんだ」


「うん」


有名なこの式場は、チャペルも大きく、バージンロードが長い。


先に入っている章人の元へ、あたしは赤い絨毯の上を、ゆっくりゆっくり、一歩一歩を踏み締める様に歩く。


オルガンの生演奏に、聖歌隊。


その厳かな雰囲気の中で、優しく微笑む章人の側へ着いた時、お父さんはゆっくりとあたしの腕を離した。


そして手を、章人へ渡す。


一礼をしてあたしの手を取った章人は、ゆっくりとその手を自分の腕へ誘導した。


そして、神前で誓うお互いへの愛。


あたしたちは、ようやく永遠の愛を約束したのだった。