「良かったです~。ドレスの調整が間に合って」
控え室の姿見に写るあたしを見ながら、志帆さんがホッとため息をついた。
志帆さんは、あたしが初めて秘書に就任した日、パンプスを買ってもらった某高級ブランド店の店員さん。
あの日以来、会う事もなかったけれど、結婚式のウエディングドレスをそこでオーダーし、志帆さんにヘアーメイクも含め、担当をお願いしたのだった。
「志帆さん、ごめんなさい。お手数をかけてしまって」
今日は、章人とあたしの結婚式。
この日を、どんなに心待ちにしていたか。
「いいえ。気になさらないでください。おめでたい事なんですから。それよりお腹、苦しくないですか?」
「大丈夫です。とてもゆとりがあるので」
あたしは微笑むと、そっとお腹に手を当てた。
実は、あたしのお腹の中には章人の赤ちゃんがいる。
本当は、式はもっと早めに挙げて、入籍をあたしの誕生日にする予定だった。
章人の仕事の絡みなどから、そういう計画だったのだけれど、途中で妊娠が分かり、安定期に入るまで延期になっていたのだった。
「今日は、美月さんの誕生日ですし、二重のおめでたですね」
志帆さんは笑顔を向けると、支度が終えた事を両親に伝える為に、部屋を出て行った。
そして、すぐ直後に両親が入って来たのだった。
「美月、綺麗じゃない」
「本当だな」
すでに、目を潤ませている両親が、あたしの側へ歩いてくる。

