「美月が退職して一ヶ月後…」
「どうやって住所が分かったのよ?」
問い詰めるあたしに、章人は少し目を泳がせた。
「お前が異動になった時、社員情報でデータを貰ってたんだよ。それは、退職と同時に破棄したんだけど…。そこに実家を書いてたろ?」
「ああ~!?思い出した!」
確か、入社したばかりの頃に、緊急連絡先で書いた記憶がある。
「それを見たの?信じられない」
わざと睨みつける。
「ごめん…。ただの職権乱用。だけどそれぐらい、美月の居場所を知りたかったんだよ」
珍しく動揺する章人に、あたしは笑ってしまった。
「会いに来てくれて、あたしを見かけたの?」
「ああ。本当に偶然、歩いてる美月を見かけて、思わず声をかけそうになったよ」
「そうだったんだ…」
もしその時、章人に声をかけられていたら、あたしはどうしたんだろう…。
「だけど、声はかけなかったのね?」
「うん。でないと、美月と別れた意味はないと思ってさ」
小さく笑う章人を見て、あたしは笑顔が消えた。
章人にさようならをした時を思い出して、切なくなったから。
「オレは、美月とは別れたくなかった。でも別れたのは、もう一度やり直す為だった」
「え…?」
「何もかも、お互いの心が整理出来たら、今度こそは本当に付き合いたかったから。美月と…」
章人が、そんな気持ちであたしに別れようと言ったなんて…。
全然、気付けなかった。
「だから、さすがに仕事を辞められた時は焦ったけど、それでも信じてたよ」
「何を?」
「美月は絶対に、またオレの側にいてくれるって」

