風で木の葉が擦れる音、鳥のさえずり。
都会の喧騒の中では、聞こえてこない音を聞きながら、あたしたちはしばらくこの高台に留まっていた。
「座ろう、美月」
章人が笑顔で座った場所は、石垣の上。
「な、なんかイメージと違うんだけど」
思わず口にすると、笑われてしまった。
「何だよ、イメージって」
「だって、そこ石垣よ?章人は、高級なソファーってイメージなんだもん」
「いいじゃん別に。オレは、美月が見てきた物を同じ様に見たいんだ。それに、それは勝手なイメージだよ」
それだけ言うと、章人は小さく手招きをした。
「隣に来いよ」
「うん…」
隣に座ると、優しく手を握られる。
こんなに幸せを感じられる日が来るなんて、思ってもみなかった…。
「章人、和久社長から聞いたの?あたしがここに居ること」
それが、ずっと疑問だったのよね。
「違うよ。美月に会ったのは聞いたけど、オレはもっと前から知ってた」
「えっ?前から知ってた?何で?」
誰にも伝えていないのに。
すると、章人は優しく微笑むと言ったのだった。
「美月にとって、ご両親との事は、ずっと引っ掛かっていたことだろ?きっと、自分のケリをつける為に帰った。そう核心したから」
得意そうに笑いながら、“でも、ほとんど賭けみたいなもんだったけど”と付け加えた。
「それにしても、よく家まで分かったね?」
そう言うと、章人は少しバツが悪そうな顔をした。
「一度だけ、美月に会いに来た事があるんだよ」
「えっ!?あたしに?い、いつ!?」

