章人は、ただ黙って見ている。
「なんて事ない場所でしょ?もう行こうよ」
およそ都会とは程遠い場所に、いつまでも引き止めるのも気が引ける。
ここは、こっちが気を利かせて帰る方向に持っていかなきゃ。
そう思って、章人に声をかけた瞬間、あたしは思いきり抱きしめられた。
一瞬の出来事過ぎて、ただ目を丸くするばかり。
そんなあたしに、章人は囁くように言ったのだった。
「会いたかったよ美月。この半年間、いつだって忘れた事はなかった…」
痛いくらいに強く抱きしめる章人は、少し震えている。
「美月、もう何も怖がらなくていいから。オレを信じて欲しい。オレの気持ちを、信じて欲しいんだ」
「章人…。何で?何でそこまであたしを…?」
込み上げる涙を拭う事が出来ず、瞬きをしたと同時に一筋流れ落ちる。
「美月じゃなきゃダメなんだ。他の誰でもダメなんだ」
優しく髪にキスをすると、ゆっくりと体を離した。
そして、あたしの左手を手に取ると、スーツの胸ポケットから何かを取り出した。
「オレたちは、今まで別々の道を歩いていたんだ」
「うん…」
真っすぐ、あたしを見つめる章人の瞳と重なる。
「だけど、こうやって巡り会えた。探していたものが、お互い同じだったから」
「同じ?」
あたしの質問に章人は頷いた。
「心から、愛し愛される人を見つけたいって気持ち」
そう言うと、手に握っていた“何か”をあたしの薬指にはめる。
そう、それはダイヤの指輪だった。
シンプルなプラチナの指輪で、ダイヤは指からはみ出るほどの大きさだ。
「これって…」
ドキドキしながら見つめると、章人は微笑み言ってくれたのだった。
「今日から、その道を一緒に歩こう。お互い、見つけ合えたよな?探していたものを…」
「章人…」
もう限界。
堪えていた涙が溢れる。
「結婚しよう美月。ずっと、オレの側にいて欲しい」

