まだまだ陽は明るく、気持ちがいい爽やかな風が吹いていた。
章人に誘われ、あたしたちは家を出て歩いている。
こんな風に、並んで歩くのは半年ぶり。
まさか、また一緒に歩ける日が来るなんて、思ってもみなかった。
そんな事を考えていると、風に乗って甘酸っぱい大人な香りが漂ってくる。
懐かしい…。
これは、紛れもなく章人の香りだ。
「なんだか、緊張するな?」
「うん…。ドキドキする」
手も繋がず微妙な距離を空けつつも、歩調をさりげなく合わせてくれる優しさは、変わっていない。
きっと、何も変わったところなんて、ないのかも…。
「美月が生まれ育った場所を見たい。連れて行ってくれないか?」
「え?でも、本当に田舎だから、面白いものなんてないよ?」
章人の様な華々しい人に、この場所はかなり違和感があるんだけど…。
だけど、そんな不安を吹き飛ばす様に、章人は微笑んで言った。
「充分、面白いよ。美月の故郷を見てみたかったから」
「う、うん…。それなら良かった」
ときめく気持ちを感じながら、あたしは徒歩圏内の場所を案内した。
通った幼稚園から中学校まで、案内をする度に章人は、興味津々で眺めていたのだった。
「本当にのどかだなぁ。個人商店の店とか、まだ残ってるんだ?」
感心する様に言う章人を、あたしは少し恥ずかしい思いで見た。
「だから、田舎って言ったでしょ?章人には珍しくても、あたしには当たり前なのよ」
「ごめん、ごめん。別にそういう意味で言ったんじゃいよ。ただ、昔の美月も見てみたかって思っただけだから」
「昔のあたし?」
「そう。この店も来たりしたんだろうなぁって、妄想してたんだよ」
そんな話をしていると、高台に着いた。
ここは、丘になっていて、眼下には住宅街が見渡せる。
外れの場所になるせいと、周りに民家がないせいでひとけが全く無い。
そこに立ち、章人は景色を見下ろした。
空は雲ひとつない快晴で、爽やかな風が時折あたしたちに優しく吹く。
「ここが、美月が育った場所か…」

