「特注ですか!?」
「そうだよ。それまでの専務には、専属秘書なんていなかったから」
そうなんだ…。
「だから、この部屋も特定の誰かの部屋じゃなくて、みんなが共有する部屋だったんだよ」
知らなかった…。
秘書の仕事は、実は同期がここの社長秘書をしている。
でも、向こうは多忙な毎日で、連絡なんてもう一年以上していない。
だから、そういう話を聞いてなかったんだよね。
「そんなに驚くなんて、一条から何も聞いてないんだ?」
専務の言葉に、あたしはさらに目を丸くした。
「専務って、絢(あや)を知ってるんですか?」
すると、“何を今さら”といった感じであたしを見た。
「オヤジの秘書なんだから、知ってるって。何度か会った事があるし」
「そうだったんですか…」
同期と専務の繋がりに驚いたあたしは、呆然と立ち尽くしてしまった。
言われてみれば納得だわ。
「ほら、ボーッとしてないでさっさと入れよ」
メインである部屋の扉を開け、専務はあたしに怪訝な顔を向けたのだった。

