そんな初のやり取りを終えたあたしたちは、専務室へと入った。
やっぱりここは、あたしがドアを開けなくちゃ。
そう思って小走りで駆け寄り、ドアに手をかけようとした瞬間、
「ドアくらい自分で開けられる」
そう言って専務は、自分で開けたのだった。
しかも、
「ほら、入れよ」
と言い、あたしを招き入れてくれた。
「ありがとうございます…」
さすがだわ。
こういうスマートな応対も、サラっと出来るなんて。
もっと、威張った厭味のある人かと思ってたのに…。
専務室は、メインの部屋に入る前に秘書室、つまりあたしの部屋がある。
デスクに、パソコンと電話機が置いているだけのシンプルな木のデスク。
だけど、そのデスクには来客にアピールするかのように、“専務秘書”のプレートが置かれていていて、一気に特別な席に見えてくるから不思議。
金色の薄い長方形のプレートに、黒字で文字が掘られていた。
つい、それに目が向いていると、気付いた専務が言ったのだった。
「それ今回特注したんだよ。お前が初めて使う物」

