こんな話をされて、章人はきっと困ってる。
そう思ったのに、優しく髪を撫でる手を止めなかった。
「どうして、そう思う様になったんだよ…」
「実はね、あたしの実家はとても堅い家庭なの」
「堅い家庭?」
あたしは章人に顔を向けると、ポツリポツリと呟く様に説明をした。
「うん。父は大学教授で、母は私立高校の学年主任なんだ」
「すごいな…。教育関係なのか。美月のご両親は」
黙って小さく頷くあたし。
誰にも話せなかったのに、なんで今ここで話してるんだろう…。
「だからね、結果を出すのは当たり前なのよ。出来なければ失望されて、出来ても満足されなくて…」
あたしが話している間、章人は黙って真剣に聞いてくれている。
「そしていつからか、あたしは両親に期待されなくなった…。そんな風に生きてきたからかな?愛される事を望まなくなったのは」
「美月…」
「暗いでしょ?だって、褒められたくて愛されたくて頑張っても、認めてもらえないんだよ?だったら、最初から相手にそれを求めなきゃいいんだよ…」
ほとんど投げやりだった自分の人生。
だけど、章人と過ごしている今日までの短い時間は、あたしにとって少しの夢が見られた。
甘い言葉やしぐさが、一瞬でも心を潤してくれたから…。
「だからね、やっぱり誰かの代わりが嫌なの。章人が蒼衣さんを重ねてあたしを見るなら、やっぱりここには居られない」

