ただの妖怪相手なら、肩で風切り歩いていられる。

廊下で擦れ違っても、相手に道を譲らせる事さえできよう。

鴉天狗とは、この国の大妖・天狗の側近たる高位の妖。

だが鴉丸にとって雪女だけは。

とりわけ佐伯の一族だけは駄目なのだ。

頭皮が叫ぶ。

『このままでは立ち枯れさせられてしまう!』

『産毛一本生えぬ不毛の荒野にされてしまう!』と。