次々と注がれる酒を豪快に飲み干しながら、美咲はまた疑問を吉川にぶつけてみた。
「なあ、先生。あのおばあさん、家族に連絡とかついてるのかい?あの人、年のせいで、ここが、その……」
そう言って美咲は自分のこめかみの辺りを指さす。何か言いよどんだ吉川に代わってフミじいさんが答えた。
「あのばあさんにゃ身寄りはねえんだ。正確に言うと、身寄りの居所は分からねえ。あの老人ホームに入った時にばあさんの身内が残して行った連絡先は全部でたらめだったんだ。だから今じゃ、この吉川先生が役所の手続きとか全部引き受けて、後見人みたいな事になってんだ」
美咲は思わずコップから口を離して憤然として口調で吉川に言った。
「それ、置き去りってやつじゃないか。ひどい奴がいるもんだな」
「まあ、ご家族はどこかの都会暮らしで、重度の認知症の君枝さんの面倒を見きれなくなったんでしょうね」
大した事ではないというような口調で言う吉川に美咲は思わず詰問調になった。
「ちょっとさ、自分の町にそういう人押し付けられてなんで腹を立てないんだよ?それに先生がそこまで面倒見る義理なんかないだろ」
だが吉川は少しさびしそうな微笑を浮かべたまま相変わらず穏やかな口調で続けた。
「どういう理由であれ、この町の人になった君枝さんを放ってはおけないでしょ?こんな田舎ではみんなで助け合わないと生きていけない。そういうものよ」
それから約一時間後、美咲はついに卓の上に左頬をくっつけて突っ伏した。
「だ、だめだ……もう飲めない」
全身がかっかと火照り目の前の光景が微妙に回っているように見えた。吉川が美咲の肩をつかんで体を起こしながら言った。
「あらあら。さあ、もうお休みなさい。布団は敷いてあるから」
「なあ、先生。あのおばあさん、家族に連絡とかついてるのかい?あの人、年のせいで、ここが、その……」
そう言って美咲は自分のこめかみの辺りを指さす。何か言いよどんだ吉川に代わってフミじいさんが答えた。
「あのばあさんにゃ身寄りはねえんだ。正確に言うと、身寄りの居所は分からねえ。あの老人ホームに入った時にばあさんの身内が残して行った連絡先は全部でたらめだったんだ。だから今じゃ、この吉川先生が役所の手続きとか全部引き受けて、後見人みたいな事になってんだ」
美咲は思わずコップから口を離して憤然として口調で吉川に言った。
「それ、置き去りってやつじゃないか。ひどい奴がいるもんだな」
「まあ、ご家族はどこかの都会暮らしで、重度の認知症の君枝さんの面倒を見きれなくなったんでしょうね」
大した事ではないというような口調で言う吉川に美咲は思わず詰問調になった。
「ちょっとさ、自分の町にそういう人押し付けられてなんで腹を立てないんだよ?それに先生がそこまで面倒見る義理なんかないだろ」
だが吉川は少しさびしそうな微笑を浮かべたまま相変わらず穏やかな口調で続けた。
「どういう理由であれ、この町の人になった君枝さんを放ってはおけないでしょ?こんな田舎ではみんなで助け合わないと生きていけない。そういうものよ」
それから約一時間後、美咲はついに卓の上に左頬をくっつけて突っ伏した。
「だ、だめだ……もう飲めない」
全身がかっかと火照り目の前の光景が微妙に回っているように見えた。吉川が美咲の肩をつかんで体を起こしながら言った。
「あらあら。さあ、もうお休みなさい。布団は敷いてあるから」



