けっこう大ぶりな椀で、美咲が差し出された器の中を見ると赤味噌の汁の中に細い白い麺がたっぷり入っている。皆とともに一口すすった美咲は思わず声を上げた。
「へえ、うまいじゃん!これ何?そうめん……にしては、口当たりがいいわね」
「それはね、温麺だよ」
 麻里が不器用に麺にすすり込みながら言った。
「ウーメン?」
 怪訝な顔をする美咲に吉川が後を引き継いで言う。
「この地方独特のそうめんなのよ。よそのそうめんは仕上げに油を塗るけど、温麺は油を使わないで風にさらして干すの。油が少ないから胃に優しいのよね」
 ああ、自分の体調を気遣ってくれたのか、と美咲は思った。だが長年の都会暮らしで、他人に気づかわれたら下心を疑う習慣がついてしまった美咲は、感情を表に出さないように無言で麺をすすり続けた。吉川は構わずに言葉を続けた。
「で、この汁の味噌は仙台味噌。東京の人でも名前ぐらい聞いたことないかな?」
 美咲は麺をすすりながら無言でうなずいた。大きな椀とは言え、そうめんではそう簡単に若い美咲の腹はふくれない。吉川に勧められるままにお代わりを頼むと、彼女は心底うれしそうに二杯目をついでくれた。
 食事が終わってお茶を飲みながら、美咲はさっきから疑問に思っていた事を吉川に訊いてみた。