★ 理想のコイビト ★

「ってか、そもそも本当の自分偽ってまでして付き合うなんて相手に対して失礼でしょ?」



「それはそうだけど……でもそれじゃ、悠生くんに好きになってもらえないし…。」



「そんなの分かんないでしょ?本人に訊いてみなきゃ。あの時、悠生くんが傍にいるからって痴漢蹴り飛ばすの我慢してたあんたは凄いと思うけど、もしかしたら誰も助けてくれなかったかもなんだよ?」



「でも、助けてくれたもん。悠生くん、助けてくれたもん。」



「それは結果論。もし悠生くんが助けてくれなかったら、あんた、どうするつもりだったの?」



「それは……でもあの時、回し蹴りしてなかったから今があるの!きっかけは最悪だったけど、か弱いあたしだったから悠生くんに見つけてもらえて、好きになってもらえて、告白してもらえたの!あたしの気持ちなんて、そのままでモテモテの愛ちゃんには分かんないもん!!」



「まっ、確かに?あんたのいう通り、モテモテのあたしには、そこまでするあんたの気持ちは分かんないけどさ、結局どんなに猫被っても、あんたはあんたでしかないの。きっかけはなんにせよ、ずっと好きでいてもらいたいなら、ずっと好きでいたいなら、ありのままの自分を好きになってもらわなきゃなんないの。……ね、悠生くん?」



「は?」



でも、どんどんヒートアップする会話に、ニヤニヤしながら耳を傾けている俺だったが、俺は当事者であって、決して傍観者なんかじゃない。