★ 理想のコイビト ★

何が嘘で何が本当だったのか、これが現実なのか夢なのかさえも分からない。



こういうのを“狐につままれた”って言うんだろうな。



なんだか泣きそうになってしまった俺は、元気出せよ、と言わんばかりにポンッと肩を叩いてくる恭一を見ることなく、はぁ…と小さく息を吐いた。



俺、繭に騙されてたのかもしれない…。



本当は俺のことなんて好きじゃなくて、適当に合わせて…いや、遊ばれてたのかもしれない。



「またまたぁ!本当は嬉しいくせに!」



「嬉しく、ないもん…。今は。」



「へ?」



「だって…だってこんなあたし、悠生くんの好みの女の子じゃないもん。」



へ?



でも繭の一言により、俺の頭の中には大量のクエスチョンマーク。



「好み?」



「うん。だって悠生くん、ドジでちょっと天然で料理上手な子が好みだって、電車で言ってたもん。」



「繭…」



は?



瞬間、バッと顔を上げた俺は、マジかよ…と言わんばかりの恭一を見ながらブンブンと首を振った。