「安心したか?
魔法を使える者がいるならば、怪物ごときに引けをとるつもりはない」
この妙な自信のワケは、揺るぎない実力に裏打ちされたものだったようだ。
「まあ、今のは相手が弱すぎだがな」
ケンカをする相手を完全に間違えたということになる傭兵たちを、ラグナードはそんなふうにバッサリと切って捨てた。
「他の大陸ではどうだか知らんが、あんな連中などエバーニアではどこの戦場でも役に立たん。
俺の部下にもいらないな」
第二大陸エバーニアは戦乱の大陸だ。
ニーベルングの五つの大陸の中でも特に、永きにわたって戦争の歴史をくり返し、今も大陸全土に渡って数々の国が争い続けている流血の大陸だった。
そんな血の大陸で千年も続く大国の王子ともなれば、戦場で死線をくぐり抜けているものなのだろうかとキリは思ったが、それにしてもラグナードの強さは異常な気がした。
「王子様なのに、危険な戦場で前線に立つの?」
「危険と言うがな」
ラグナードの口もとに皮肉げな笑みがうかぶ。
「俺が率いるのは飛空騎士団だ。
ただの飛行騎杖はともかく、戦闘騎杖一騎の戦力は陸の騎兵千の戦力にも匹敵する。
安全な空から地上の敵に槍を投擲し、弓矢で狙い、騎杖の魔法の弾を掃射し──そんな戦いのどこに危険がある」
だからこそ、一千年前──
まだ五つの大陸の他の国がどこも陸戦技術しか持たなかった時代──
神聖エスメラルダ帝国が開発し、独占していた戦闘騎杖の技術の戦場への投入は、侵略を進める帝国に劇的な勝利をもたらした。
当時の戦闘騎杖は音速を超える速度など出せるようなものではなかったし、
今のように規格化された魔法の攻撃ができるような装備や、魔法使い以外の者にも操縦可能となるような技術も存在していなかったが、
それでも安全な高度を保って高速で飛び回る魔法使いたちの国の兵団には、地上からの槍も矢も届かず、
対抗するためには同じように戦闘騎杖を持つか、強力な対空攻撃魔法を行える者の力に頼るしか術はなかったのである。
そしてそのどちらも、千年前にはエスメラルダ以外の国は持ち得なかった。
「でも、いくら空飛ぶ騎士団が安全でも、今は戦闘騎杖同士の戦いもあるでしょ?」
「まあな」
現代の戦闘騎杖同士の戦いの場合、
一騎でも所有数を増やせば大きな戦力増強につながる高価な兵器のため、操縦者のみを殺して敵の騎杖はなるべく傷つけず、戦利品として持ち帰るのがセオリーとなっている。
主砲や魔力弾の掃射は極力避け、戦闘騎杖を操りながら剣をふるって、
互いに高速ですれ違い様、杖の速度を上乗せした剣で相手を一刀のもとに斬り捨てる。
昔ながらの陸の騎兵戦と同じ、こういう一騎打ちに近い戦い方が空で行われていた。
無論、馬を駆る陸戦よりも遙かに高度な戦闘技術と剣の腕が必要となる。
魔法を使える者がいるならば、怪物ごときに引けをとるつもりはない」
この妙な自信のワケは、揺るぎない実力に裏打ちされたものだったようだ。
「まあ、今のは相手が弱すぎだがな」
ケンカをする相手を完全に間違えたということになる傭兵たちを、ラグナードはそんなふうにバッサリと切って捨てた。
「他の大陸ではどうだか知らんが、あんな連中などエバーニアではどこの戦場でも役に立たん。
俺の部下にもいらないな」
第二大陸エバーニアは戦乱の大陸だ。
ニーベルングの五つの大陸の中でも特に、永きにわたって戦争の歴史をくり返し、今も大陸全土に渡って数々の国が争い続けている流血の大陸だった。
そんな血の大陸で千年も続く大国の王子ともなれば、戦場で死線をくぐり抜けているものなのだろうかとキリは思ったが、それにしてもラグナードの強さは異常な気がした。
「王子様なのに、危険な戦場で前線に立つの?」
「危険と言うがな」
ラグナードの口もとに皮肉げな笑みがうかぶ。
「俺が率いるのは飛空騎士団だ。
ただの飛行騎杖はともかく、戦闘騎杖一騎の戦力は陸の騎兵千の戦力にも匹敵する。
安全な空から地上の敵に槍を投擲し、弓矢で狙い、騎杖の魔法の弾を掃射し──そんな戦いのどこに危険がある」
だからこそ、一千年前──
まだ五つの大陸の他の国がどこも陸戦技術しか持たなかった時代──
神聖エスメラルダ帝国が開発し、独占していた戦闘騎杖の技術の戦場への投入は、侵略を進める帝国に劇的な勝利をもたらした。
当時の戦闘騎杖は音速を超える速度など出せるようなものではなかったし、
今のように規格化された魔法の攻撃ができるような装備や、魔法使い以外の者にも操縦可能となるような技術も存在していなかったが、
それでも安全な高度を保って高速で飛び回る魔法使いたちの国の兵団には、地上からの槍も矢も届かず、
対抗するためには同じように戦闘騎杖を持つか、強力な対空攻撃魔法を行える者の力に頼るしか術はなかったのである。
そしてそのどちらも、千年前にはエスメラルダ以外の国は持ち得なかった。
「でも、いくら空飛ぶ騎士団が安全でも、今は戦闘騎杖同士の戦いもあるでしょ?」
「まあな」
現代の戦闘騎杖同士の戦いの場合、
一騎でも所有数を増やせば大きな戦力増強につながる高価な兵器のため、操縦者のみを殺して敵の騎杖はなるべく傷つけず、戦利品として持ち帰るのがセオリーとなっている。
主砲や魔力弾の掃射は極力避け、戦闘騎杖を操りながら剣をふるって、
互いに高速ですれ違い様、杖の速度を上乗せした剣で相手を一刀のもとに斬り捨てる。
昔ながらの陸の騎兵戦と同じ、こういう一騎打ちに近い戦い方が空で行われていた。
無論、馬を駆る陸戦よりも遙かに高度な戦闘技術と剣の腕が必要となる。



