「それで、わたしいつまで杖を飛ばさないといけないの?
パイロープにはどのくらいで着くのかな?」
上空にいるせいかよく見えるエバーニアを仰いで、キリは尋ねた。
氷に閉ざされているならば白くなっているのではと思いながらパイロープを探したが、雲やら何やら、白いものはたくさん見えて位置はわからなかった。
「南に向かって飛んでいるから少し大回りになるが、そうだな……」
ラグナードは少し考え込んだ。
キリが頭上から前方に視線を移すと、前方の大地は遠くに行くほどゆるくせり上がりながら大気にかすんで消えている。
更に目を前方の彼方に向ければ、上空へ向かって幅を細めながら垂直に伸びる遠くの大地が見える。
首をめぐらせると、秋分を過ぎて東の空から降りてくるようになった朝の太陽が、左後ろにあるのがわかった。
まっすぐ南に向かっているのは確かだった。
ニーベルングの環状大地は南北でせり上がり、内部の上空を囲んで頭上でぐるりと一周している。
リング状の大地に沿って、この第五大陸ゴンドワナから第二大陸エバーニアへと向かうには、
南下して第三大陸ローレンシア、第一大陸ケノーランドの二つの大陸を超えて行くか、
北上して第四大陸パノティアを超えるか、
地図上では二つの選択肢があるように見える。
「やっぱり南のほうが大回りになるんだね」
キリは背後で頭上に向かってせり上がるパノティアを振り返って言った。
実際には北上するルートは存在していない。
「と言ってもほんのわずかだ。
聖域の上空を通過することは禁止されているから仕方がない」
「王族なのにダメなの?」
「パノティアへの立ち入りを許されるのは、魔法使い以外では王だけだ」
ニーベルングの中でも最大の長さを占めて南北にのびている第四大陸パノティアは、特別な大陸だ。
この世界の始まりの地とされ、この聖域に立ち入ることが可能なのは、魔法使いか、あるいは各国で国王ただ一人だけだった。
「仮に聖域を通過できたとしても、ゴンドワナとパノティアの間にはラーンの海がある」
大陸間の海はどこも大した距離ではないが、第五大陸と第四大陸を隔てるラーンの海だけはとてつもなく広い。
「いくら飛んで移動していると言っても、何かあった時に着地できる陸地がないのは困る。
まあ、南を回っても約二万キーリオメトルムとして、この調子なら今夜はケノーランドのどこか──『喪失のイレム』の辺りで一泊して、明日の午後というところだな」
「明日には着いちゃうの!?」
おどろいて、キリは頓狂な声を出した。
「それって、天空船で行くよりも早いんじゃないの?」
パイロープにはどのくらいで着くのかな?」
上空にいるせいかよく見えるエバーニアを仰いで、キリは尋ねた。
氷に閉ざされているならば白くなっているのではと思いながらパイロープを探したが、雲やら何やら、白いものはたくさん見えて位置はわからなかった。
「南に向かって飛んでいるから少し大回りになるが、そうだな……」
ラグナードは少し考え込んだ。
キリが頭上から前方に視線を移すと、前方の大地は遠くに行くほどゆるくせり上がりながら大気にかすんで消えている。
更に目を前方の彼方に向ければ、上空へ向かって幅を細めながら垂直に伸びる遠くの大地が見える。
首をめぐらせると、秋分を過ぎて東の空から降りてくるようになった朝の太陽が、左後ろにあるのがわかった。
まっすぐ南に向かっているのは確かだった。
ニーベルングの環状大地は南北でせり上がり、内部の上空を囲んで頭上でぐるりと一周している。
リング状の大地に沿って、この第五大陸ゴンドワナから第二大陸エバーニアへと向かうには、
南下して第三大陸ローレンシア、第一大陸ケノーランドの二つの大陸を超えて行くか、
北上して第四大陸パノティアを超えるか、
地図上では二つの選択肢があるように見える。
「やっぱり南のほうが大回りになるんだね」
キリは背後で頭上に向かってせり上がるパノティアを振り返って言った。
実際には北上するルートは存在していない。
「と言ってもほんのわずかだ。
聖域の上空を通過することは禁止されているから仕方がない」
「王族なのにダメなの?」
「パノティアへの立ち入りを許されるのは、魔法使い以外では王だけだ」
ニーベルングの中でも最大の長さを占めて南北にのびている第四大陸パノティアは、特別な大陸だ。
この世界の始まりの地とされ、この聖域に立ち入ることが可能なのは、魔法使いか、あるいは各国で国王ただ一人だけだった。
「仮に聖域を通過できたとしても、ゴンドワナとパノティアの間にはラーンの海がある」
大陸間の海はどこも大した距離ではないが、第五大陸と第四大陸を隔てるラーンの海だけはとてつもなく広い。
「いくら飛んで移動していると言っても、何かあった時に着地できる陸地がないのは困る。
まあ、南を回っても約二万キーリオメトルムとして、この調子なら今夜はケノーランドのどこか──『喪失のイレム』の辺りで一泊して、明日の午後というところだな」
「明日には着いちゃうの!?」
おどろいて、キリは頓狂な声を出した。
「それって、天空船で行くよりも早いんじゃないの?」



