そんな!
キリはセイの亡骸(なきがら)を見つめた。
それでは、このもうろくした老人のミスで、キリの友達は殺されたというのか。
まったく無意味に。
「本の……とおりに……?」
悪魔の言葉をなぞって、シムノンは奈落のような悪魔の瞳をのぞきこんだ。
「どうして貴様が、本のことを知っている?」
「余は全知のエコルパールの悪魔だ。なんでも知っている」
悪魔はとぼけた調子で肩をすくめてから、ふふ、と忍び笑いをもらした。
「──と言いたいところだが、こと『ヴェズルングの遺した黒い本』に関して言えば、余がそれを知っているのにはもっと別の理由がある」
「別の……?」
見開かれたシムノンの目に、邪悪なにやにや笑いが映った。
「余が書き記したものだからだ」
「な──」
「それを本気で行おうとする者のみに読めるように魔法をかけて、この方法で余を招かせるために、世界中にばらまいた黒い本。
おまえが手にしたのは、その中の一冊だ」
シムノンはぼうぜんとした。
ヴェズルングの署名を見て、彼は舞い上がった。
悪魔が──魔王ロキ自身が書き記した本だなどと、思い至れるはずもなかった。
待ちわびた、と悪魔は感慨深そうに、周囲の霧にしみこむため息をひとつはき出した。
「千年待ったが、おまえたちだけだ。
これを成功させたのは」
「儂は……いったい、なにをした……?」
はじめて、己の為したことにシムノンは恐怖を覚えた。
自らの行動が、彼自身の意志とはまったく別の、魔王の仕組んだもくろみに操られたものであったことに、ぞっとした。
「ロキよ、なぜこの方法で招かれることにこだわった……?
貴様を召還した者など、過去にいくらでもいたはず──
なにが、違う?
この方法と、他の魔法使いが貴様を召還した方法と……」
「それは、この方法を成功させたおまえ自身が誰よりもよく理解しているだろう」
悪魔が目を細めて、
シムノンはよろめいて、後ずさった。
最初に、この世界の外からの客人(まろうど)の姿を見たときに感じた、彼の衝撃。
それこそが、通常の召還との決定的な違いに他ならない。
キリはセイの亡骸(なきがら)を見つめた。
それでは、このもうろくした老人のミスで、キリの友達は殺されたというのか。
まったく無意味に。
「本の……とおりに……?」
悪魔の言葉をなぞって、シムノンは奈落のような悪魔の瞳をのぞきこんだ。
「どうして貴様が、本のことを知っている?」
「余は全知のエコルパールの悪魔だ。なんでも知っている」
悪魔はとぼけた調子で肩をすくめてから、ふふ、と忍び笑いをもらした。
「──と言いたいところだが、こと『ヴェズルングの遺した黒い本』に関して言えば、余がそれを知っているのにはもっと別の理由がある」
「別の……?」
見開かれたシムノンの目に、邪悪なにやにや笑いが映った。
「余が書き記したものだからだ」
「な──」
「それを本気で行おうとする者のみに読めるように魔法をかけて、この方法で余を招かせるために、世界中にばらまいた黒い本。
おまえが手にしたのは、その中の一冊だ」
シムノンはぼうぜんとした。
ヴェズルングの署名を見て、彼は舞い上がった。
悪魔が──魔王ロキ自身が書き記した本だなどと、思い至れるはずもなかった。
待ちわびた、と悪魔は感慨深そうに、周囲の霧にしみこむため息をひとつはき出した。
「千年待ったが、おまえたちだけだ。
これを成功させたのは」
「儂は……いったい、なにをした……?」
はじめて、己の為したことにシムノンは恐怖を覚えた。
自らの行動が、彼自身の意志とはまったく別の、魔王の仕組んだもくろみに操られたものであったことに、ぞっとした。
「ロキよ、なぜこの方法で招かれることにこだわった……?
貴様を召還した者など、過去にいくらでもいたはず──
なにが、違う?
この方法と、他の魔法使いが貴様を召還した方法と……」
「それは、この方法を成功させたおまえ自身が誰よりもよく理解しているだろう」
悪魔が目を細めて、
シムノンはよろめいて、後ずさった。
最初に、この世界の外からの客人(まろうど)の姿を見たときに感じた、彼の衝撃。
それこそが、通常の召還との決定的な違いに他ならない。



