やがて、
ずきずき痛む頭を押さえて、
シムノンが目を覚ましたとき、
「困ったことになったぞ」
と、彼を見下ろして悪魔は言った。
はっと、シムノンは飛び起きた。
「このガキ!」
怒りもあらわに、キリにつかみかかろうとしたところで、
「おまえとの契約に、不具合が生じた」
耳を疑うセリフが悪魔から放たれて、シムノンは凍りついた。
殴られた怒りなど一瞬で頭の中から吹き飛び、どういうことかとシムノンは悪魔につめよった。
「聞けば、余を招いたのはおまえ一人の力ではなく、三人がかりだというではないか」
「さ……三人?」
悪魔は人差し指を立てて、
「おまえと、この子供と、そこの骸(むくろ)だ」
部屋の中の人間を順番に指さした。
「ガキ!」
シムノンは激昂して、キリをにらみつけた。
「儂をさしおいて、ロキに何を話したんだい!?」
キリは、ほっぺたをふくらませてぷいっとそっぽを向いた。
悪魔はかまわずに続けた。
「魔法使いよ、おまえはこの子供に自らの意志と魔法と魔力を送りこみ、子供の体を一時的に乗っ取って操ることで、霧の魔法を使って余を招いたらしいな」
「それが……なんだ!?」
シムノンはわなわなと身をふるわせながらどなった。
「それに、なにか問題が!?」
「いやいや」
悪魔は満面の笑みをうかべた。
「すばらしい。人の身でありながらそんな方法で属性の制約を克服し、みごと余を招いてみせるとは、確かに優れた魔法使いだ」
世界の外から来た神秘の存在にほめられて、シムノンは少しだけ気をよくした。
「しかし、そこの骸は何かな? そんなものを使ったのは、どういうわけだ?」
悪魔はキリの大切な友達のことを、物のように言って、
「生贄に決まっているだろう!」
シムノンは当たり前のことだと言わんばかりに答えた。
「そこのガキは、生命の魔法使いだったんだ。
この上ない生贄だ」
「ふむ。しかし『あの本』には、この召還にそんなものが必要だとは書いてなかったはずだが?」
「たしかに書いてはなかったが……」
シムノンは鼻白んだ。
「だが、それはあの本の内容が間違っておったのだ。
強力な生贄なしに、人の力ではこの魔法は発動しない」
「愚か者め」
と言って、悪魔は指をぱちんと鳴らした。
床一面に描かれた紫色の魔法陣の上から、さらに複雑な図形が深紅に輝く線で描かれた。
「図形が足りておらん。魔法陣を描き誤ったな。
たしかにこの未完成の陣形では、上等な生贄でも使わぬかぎりは余を招くことは不可能であったろう」
「ばかな……」
シムノンが狼狽して、目を見開いた。
「まことに本のとおりに我を招いておれば、生贄は不要だったはずだ」
悪魔は淡々とそう語った。
ずきずき痛む頭を押さえて、
シムノンが目を覚ましたとき、
「困ったことになったぞ」
と、彼を見下ろして悪魔は言った。
はっと、シムノンは飛び起きた。
「このガキ!」
怒りもあらわに、キリにつかみかかろうとしたところで、
「おまえとの契約に、不具合が生じた」
耳を疑うセリフが悪魔から放たれて、シムノンは凍りついた。
殴られた怒りなど一瞬で頭の中から吹き飛び、どういうことかとシムノンは悪魔につめよった。
「聞けば、余を招いたのはおまえ一人の力ではなく、三人がかりだというではないか」
「さ……三人?」
悪魔は人差し指を立てて、
「おまえと、この子供と、そこの骸(むくろ)だ」
部屋の中の人間を順番に指さした。
「ガキ!」
シムノンは激昂して、キリをにらみつけた。
「儂をさしおいて、ロキに何を話したんだい!?」
キリは、ほっぺたをふくらませてぷいっとそっぽを向いた。
悪魔はかまわずに続けた。
「魔法使いよ、おまえはこの子供に自らの意志と魔法と魔力を送りこみ、子供の体を一時的に乗っ取って操ることで、霧の魔法を使って余を招いたらしいな」
「それが……なんだ!?」
シムノンはわなわなと身をふるわせながらどなった。
「それに、なにか問題が!?」
「いやいや」
悪魔は満面の笑みをうかべた。
「すばらしい。人の身でありながらそんな方法で属性の制約を克服し、みごと余を招いてみせるとは、確かに優れた魔法使いだ」
世界の外から来た神秘の存在にほめられて、シムノンは少しだけ気をよくした。
「しかし、そこの骸は何かな? そんなものを使ったのは、どういうわけだ?」
悪魔はキリの大切な友達のことを、物のように言って、
「生贄に決まっているだろう!」
シムノンは当たり前のことだと言わんばかりに答えた。
「そこのガキは、生命の魔法使いだったんだ。
この上ない生贄だ」
「ふむ。しかし『あの本』には、この召還にそんなものが必要だとは書いてなかったはずだが?」
「たしかに書いてはなかったが……」
シムノンは鼻白んだ。
「だが、それはあの本の内容が間違っておったのだ。
強力な生贄なしに、人の力ではこの魔法は発動しない」
「愚か者め」
と言って、悪魔は指をぱちんと鳴らした。
床一面に描かれた紫色の魔法陣の上から、さらに複雑な図形が深紅に輝く線で描かれた。
「図形が足りておらん。魔法陣を描き誤ったな。
たしかにこの未完成の陣形では、上等な生贄でも使わぬかぎりは余を招くことは不可能であったろう」
「ばかな……」
シムノンが狼狽して、目を見開いた。
「まことに本のとおりに我を招いておれば、生贄は不要だったはずだ」
悪魔は淡々とそう語った。



