キリと悪魔の千年回廊

そう言って、彼は少女に


「キリ」


という名前をくれた。


「キリ?」

「霧の魔法使いだから、キリ」

「じゃあ、わたしもなまえをつけてあげる」


キリは、少年に「セイ」という名前をあげた。


「生命の魔法使いだから、セイ」


まるでなにかの儀式のように、
二人の子供は互いに名前をつけ合って、


それからいつでも、二人はいっしょだった。


冬の寒い夜には、一枚の毛布にくるまって身を寄せ合って眠り、

彼らをいじめる老人への不満や悪口を言っては、おたがいになぐさめ合った。


世界中で、彼らはふたりぼっちだった。


「はやくオズになりたいな」と、セイはよく口にした。

キリには、どうしてセイがそんなものになりたいのかわからなかった。

「だって、オズは世界で一番すごい魔法使いだって聞いたよ」

セイは瞳をきらきらさせた。

「ぼくは、世界で一番有名で、偉大な魔法使いになりたいんだ」

セイは青白いほっぺたを紅潮させて、「だってね」と、己の構想を語った。



「だってさ、偉大な魔法使いになって、有名になったら──」



それはたいそうすてきな考えに思えて、

キリは、失われていた希望が心の中にもどってくるのを感じた。


「いいなあ、それ。
じゃあわたしも偉大な魔法使いになる!」

「うん」とセイはほほえんだ。

「ふたりで有名になろうよ」

「約束」

「うん、約束」


二人は笑い合って、

「それなら、魔法の練習をしないと」

と、キリは言った。

「セイは魔法でなにかできる?」

「なんにも」

セイは肩を落とした。

「あのクソジジイったら、ぼくをこき使うだけでなんにも教えてくれないんだもの。
キリはいいよな、たくさん魔法が使えて」

「わたしもなんにもできないよ」

キリもため息をこぼした。

「わたしは、あのクソジジイに操られて魔法を使ってるだけだもん。
操られてるときは、いろんなことが頭に浮かんで、何でもできるような気がするけど、その後はなんにもおぼえてないの。
一人だと魔法なんて、ひとつも使えないよ」

二人はがっかりして、

それから老人の目を盗んで、老人が所有する様々な魔法の書物を読んでみたが、

リンガー・マギで書かれた魔法の本はちんぷんかんぷんで、子供の二人にはさっぱり理解できなかった。