キリと悪魔の千年回廊










〈私の次にそれを行う汝へ


私が魔王ロキを招き

最強の魔法使いとなった方法を記す


この方法で世界に招いた者に対してのみ

彼の者はいかなる望みをも叶えるだろう


──ヴェズルング・ファールバウティ〉










「ヴェズルング!?」

目を疑って、シムノンは思わず本を落としそうになった。


「霧のヴェズルングが残した本だったのか──!?」


しかも、


「魔王ロキを招き、最強の魔法使いとなった……?」


衝撃的な文面に、手がふるえた。


真実ならば、

今、彼が手にしているのは、
千年前の史上最強の魔法使いのとてつもない秘密だ。


このリンガー・マギが真実ならば──


霧のヴェズルングは、
エコルパールの悪魔との契約によって最強の力を手に入れたということだ。


それも、

ただの悪魔ではない。


「魔王ロキだと……?」


シムノンの老いた全身がふるえる。



これは、

この本は、


とてつもない秘密の本だ。



何より、

味わったことのない興奮と歓喜に彼の全身をふるわせているのは、一行目の文字だった。



〈私の次にそれを行う汝へ〉



シムノンはふるえる手でその白いリンガー・マギを慈しみをこめてなで、声に出して読んだ。

これこそが、この本にかけられていた魔法の正体だったのだ。

この黒い本は、
それを行う者のもとに現れ、
それを行う者だけが読めるように、魔法がかけられていたのだ。


〈汝へ〉

と、シムノンはもう一度声に出してくり返した。


本は、シムノンを選んだ。

彼は選ばれた。



そして、

ヴェズルングの署名の前に書かれた最後の一文は、シムノンを絶望の淵から救い上げた。


いかなる望みをも叶える──。




魔王ロキの名は、大陸を五つに切り裂いたという神話とはまた別の理由で、魔法使いの間では有名だった。


もっとも多く人の世界に関わってきたエコルパールの悪魔。


シムノンが読んだ禁書にも、かなりの頻度でこの霧の悪魔を召還した記録が登場した。

この悪魔の召還の方法や、召還した時の容姿に至るまでのこと細かな記述が、いくつもの禁書に乗っている。


ロキこそは、もっとも多く人の招きと契約に応じ、

もっとも多く人を弄び、

人を破滅させてきた魔王であった。




そのロキが、




いかなる望みをも叶える──




シムノンの心はおどりあがった。


つまり、この文面によると、
なにか召還の際に特別な招き方があるということらしい。

誰も知らない秘密の方法があるのだ。

かつてヴェズルングだけがたどり着き、望みを叶えた──悪魔を手なずける方法が。