キリと悪魔の千年回廊

「前に言った【紫電のル・ルー】【青星のアルシャラ】【月白のミレイ】の三人なら、火力的には、たぶん……」

キリは以前に相まみえた、オレンジ色の髪をした優しそうな若者を思いうかべる。

「わたしも実際にアルシャラの炎の魔法を見たけど、彼の魔法なら──やり方次第で一人でも天の人に対抗できるかもしれない。
ル・ルーとアルシャラは若い魔法使いだけど、ミレイは齢百歳を超えた大魔法使いだって話だし」

キリよりは年上だとは言え、年齢を聞けばアルシャラは魔法使いとしてはほとんどキリと変わらない赤子同然の若者だった。

しかしキリに、他人の魔法を奪いつづけてきたと語ったあの青年は、実年齢を無視した異常な魔力を備えていた。

一方、紫電のル・ルーと呼ばれる雷の魔法使いもまた、噂では百歳を超えていない若い魔法使いだというが、ル・ルーのほうはただ単純に、強大な火力を誇る属性に加えて、他に類を見ない天才的な魔法の才能の持ち主であるがために、若くして強い魔法使いとしてその名が知れ渡っている。

「それに、魔法には何人かがかりで一つの魔法を使う『合わせ掛け』もあるから」

とキリは説明して、それから
傷ついた白い羽毛の間から彼女をじっと見ている大きな瞳を、こわごわのぞきこんだ。

『ねえ、あなたを襲った魔法使いのことだけど……』

『今の貴族語の話なら、聞き取れている』

キリをさえぎって、ドラゴンはリンガー・レクスでそう言った。

『エスメラルダの魔法使いの仕業だというのか』

『何か、気づいたことはない?
せめて、どの属性の魔法の攻撃だったのかわかれば──』

『残念だがわからぬ。
突然、魔力の衝撃を受けて、一瞬で大地にたたきつけられた』

『大地にたたきつける……だけ?』

竜の答えを反すうして、キリは首をひねった。

『ル・ルーの雷やプラズマも、アルシャラの火炎も、ミレイの熱線も、直撃を受けたら丸焦げになるもんなんだけどな』

衝撃を受けて落ちただけとなると、話に聞く彼らの魔法の特徴とはどうも一致しない。

合わせ掛けの場合も属性を反映した魔法になるはずだから、彼らの仕業ならばこの竜は大地にたたきつけられただけでは済まず、丸焼きにされていて然るべきだった。

『やっぱり話を聞くと距離消滅の霧の魔法っぽいけど──霧の魔法使いなんて、わたしだけだし。
あとは、大地の重力を変化させるような魔法とか、突風の魔法かなあ』

しかし大地や風の属性の魔法使いで、このドラゴンに通用するような魔法を使える者となると、キリが聞いたことのある魔法使いの中にはさっぱり思い当たる名前がなかった。