白い羽が雪のように舞い散る。
咆吼を上げ、竜の体が大地に崩れ落ちる。
ラグナードに抱えられたまま、キリが息を止めて燃えさかる炎の剣に見入った。
ラグナードもまた、あまりのことに瞬きすら忘れた。
剣に起きたおそるべき劇的な変化は、彼の想像をはるかに上回っていた。
「こんな力が封印されていたのか……」
銀色の刀身はオレンジに輝き、今なお刃の周囲にからみつくようにして赤々と火炎が立ち上っている。
「封印されていた『何か』とは──『火』なのか──」
ラグナードは、ガルナティス王家を象徴する狼と炎の刺繍がほどこされた自身のマントの垂れ布と、赤く燃える聖剣とを見比べた。
「王家の紋章と同じ……火の剣──?」
伝え聞いたレーヴァンテインの由来を思い起こし、混乱した頭でこの事実が意味するところを何とか導き出そうとして、
『小僧、そんな剣をいったいどこで──』
耳に届いたそのうめき声に、はっと我に返る。
地に白い体を横たえたまま、
頭だけをもたげて、ドラゴンが青い瞳をこちらに向けていた。
胸から背にかけて大きく焼き切られた傷口は黒く焼けただれ、金色の肉が見えた。
凍りついた白い大地の上に、黄金の水銀を思わせる金属の光沢を持つ血液がどくどくと流れ出て、金の血だまりを作っている。
ラグナードは、深紅の炎を吹き上げ続ける剣の柄を握りしめた。
「キリ、おまえはここにいろ」
優しく言ってキリの肩から手を離し、
少女をその場に置いて、とどめを刺すため金の血に染まった白い巨躯へと歩み寄る。
あのとき、彼はもう一つだけ封印を解かせるつもりだったが、
キリはレーヴァンテインに残されていた封印をまとめて三つも解いた。
昨夜の分と合わせて、これで四つの封印が解かれたことになる。
しかしまだ半分以上、封印は残っているのだ。
炎の剣を構えて近づくラグナードの姿を認めて、ドラゴンは身を起こそうともがくが、
聖剣の一斬りによって与えられた傷からは、黄金の血とともに体力と魔力とが容赦なく流れ出で失われ続けて、徐々に白い体の動きは弱まってゆく。
白い巨躯へと歩を進めながら、ラグナードは、
まるで子供の頃、生まれて初めて人を殺す鋼の武器を手にした時のように、恐怖にも似た興奮と高揚感とに支配されていた。
どくどくとやかましく鳴る心臓の音が聞こえた。
自分は今、ドラゴンをも圧倒する力をたずさえているのだ、という信じがたい現実が、心の中にいつしか飼い続けて戦場で育ててきた獣を狂喜させ、鼓動は耳を経由せずに直接頭に入りこんで鳴り響いているかのようだった。
咆吼を上げ、竜の体が大地に崩れ落ちる。
ラグナードに抱えられたまま、キリが息を止めて燃えさかる炎の剣に見入った。
ラグナードもまた、あまりのことに瞬きすら忘れた。
剣に起きたおそるべき劇的な変化は、彼の想像をはるかに上回っていた。
「こんな力が封印されていたのか……」
銀色の刀身はオレンジに輝き、今なお刃の周囲にからみつくようにして赤々と火炎が立ち上っている。
「封印されていた『何か』とは──『火』なのか──」
ラグナードは、ガルナティス王家を象徴する狼と炎の刺繍がほどこされた自身のマントの垂れ布と、赤く燃える聖剣とを見比べた。
「王家の紋章と同じ……火の剣──?」
伝え聞いたレーヴァンテインの由来を思い起こし、混乱した頭でこの事実が意味するところを何とか導き出そうとして、
『小僧、そんな剣をいったいどこで──』
耳に届いたそのうめき声に、はっと我に返る。
地に白い体を横たえたまま、
頭だけをもたげて、ドラゴンが青い瞳をこちらに向けていた。
胸から背にかけて大きく焼き切られた傷口は黒く焼けただれ、金色の肉が見えた。
凍りついた白い大地の上に、黄金の水銀を思わせる金属の光沢を持つ血液がどくどくと流れ出て、金の血だまりを作っている。
ラグナードは、深紅の炎を吹き上げ続ける剣の柄を握りしめた。
「キリ、おまえはここにいろ」
優しく言ってキリの肩から手を離し、
少女をその場に置いて、とどめを刺すため金の血に染まった白い巨躯へと歩み寄る。
あのとき、彼はもう一つだけ封印を解かせるつもりだったが、
キリはレーヴァンテインに残されていた封印をまとめて三つも解いた。
昨夜の分と合わせて、これで四つの封印が解かれたことになる。
しかしまだ半分以上、封印は残っているのだ。
炎の剣を構えて近づくラグナードの姿を認めて、ドラゴンは身を起こそうともがくが、
聖剣の一斬りによって与えられた傷からは、黄金の血とともに体力と魔力とが容赦なく流れ出で失われ続けて、徐々に白い体の動きは弱まってゆく。
白い巨躯へと歩を進めながら、ラグナードは、
まるで子供の頃、生まれて初めて人を殺す鋼の武器を手にした時のように、恐怖にも似た興奮と高揚感とに支配されていた。
どくどくとやかましく鳴る心臓の音が聞こえた。
自分は今、ドラゴンをも圧倒する力をたずさえているのだ、という信じがたい現実が、心の中にいつしか飼い続けて戦場で育ててきた獣を狂喜させ、鼓動は耳を経由せずに直接頭に入りこんで鳴り響いているかのようだった。



